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台湾有事の前にチャイナリスク


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中国が米テスラに“撤退圧力” 企業が再考すべき「チャイナリスク」とは

 中国の「カントリーリスク」はとどまるところを知らない。直近では、2011年の東日本大震災によって起きた福島第一原子力発電所の事故を受けて、これまで蓄積されてきた冷却水(いわゆる処理水)の海洋放出が大変な物議になっている。8月24日から開始したALPS処理水の放出を受けて、中国政府は直ちに日本の水産物の輸入を全面禁止にした。また日本企業のボイコットもSNSで広がっており、これからさらに広がる可能性も指摘されている。

 加えて、中国から大量の“電凸”が発生し、日本各地にその被害は及んだ。報道によれば、東京電力には6000件以上、東京都庁には3万件以上の迷惑電話がそれぞれ発生したという。もはやサイバー攻撃でいうなら「DDoS攻撃」のようなもので、威力業務妨害罪になる可能性がある。発信番号などを突き止めて、今後の入国者と照らし合わせて摘発する、といったところまで毅然と対応すれば日本政府も大したものだが、もちろんそんなことはできないだろう。

 この騒動の前には、7月1日に中国で反スパイ法の改正法が施行されており、これまで以上に恣意的に中国当局が外国人を拘束できてしまうことになった。中国に進出している日本の企業関係者からは「中国には怖くてもう行けない」という悲鳴に近い声も聞こえている。

 中国と深く関わること自体がリスクになりつつある昨今だが、これは何も日本だけの問題ではない。実は、これまで中国進出の成功例と見られていた、ある米大手企業も難しい現実に直面している。その企業とは電気自動車大手のテスラだ。

 世界一の富豪で稀代のビジネスマンと評されるイーロン・マスクが率いるテスラも「中国リスク」を抱えているのである。そこで、テスラが置かれている状況を考察しつつ、日本企業がそこから何が学べるのか探ってみたい。

●“蜜月関係”10年 中国は特別厚遇で誘致 

 テスラと中国の関係が始まったのは、テスラを中国で販売し始めた2014年にまでさかのぼる。18年にはテスラは3つ目となる大規模工場「ギガファクトリー」を初めて海外で作ることになり、その場所に選ばれたのが中国の上海だった。アメリカ以外の海外で初のギガファクトリーとなった。

 これを誘致するのに、中国はテスラには特別な厚遇条件を許した。それまでは外国資本の自動車メーカーは、中国企業と合同会社を作る必要があった。そんな条件でも中国進出する企業が後を絶たなかったのは、その市場規模と、賃金の安さなどの魅力があったからだ。さらに、中国国内で生産して販売すると、本来なら中国市場に自動車を輸入する場合に必要となる25%の自動車税は必要なくなる。

 ところがテスラはそれまでの外国資本企業とは一線を画し、外国自動車メーカーとして史上初めて地元企業と合弁をせず事業を行っていいという異例の待遇で上海に上陸した(22年1月から自動車メーカーへの合弁会社ルールは撤廃された)。これに加え、上海当局は、テスラの現地法人に対して、通常の25%ではなく15%に優遇した法人税率を認めている。

●厚遇の引き換えは部品の現地調達

 一方で、中国側は、部品などのサプライヤーは中国企業にすることを確認している。これはテスラにとってもコストカットができるため、お互いウィンウィンというわけだが、テスラの技術が盗まれる可能性が高かった。

 テスラの幹部は22年、中国系のSNS「微博」(ウェイボ)への投稿で、テスラのサプライヤーは95%が中国企業になったと明らかにしている。つまり、テスラが調達している部品の95%が中国の現地調達だということだ。

 ただ中国企業にはテスラ側から技術や品質管理などで管理が必要になる。中国企業はそうしたテスラのノウハウだけでなく、技術力も手に入れることができたはずだ。そして、4年ほどが経った今、中国のサプライヤー企業も成長し、その技術を中国メーカーに「移転」することもできるようになった。

●中国メーカー台頭 テスラは「用なし」に?

 すでに述べた通り、サプライヤーを中国企業にする約束をしていたことで、中国企業が手を合わせればテスラに近いようなハイテク電気自動車の部品などを生み出せる。

 事実、そうしたサプライヤー企業は現在では中国の自動車メーカーともビジネスをしており、テスラから学んだ技術が中国メーカーに渡り、実際に最近では中国メーカーがテスラに負けるとも劣らないような電気自動車を生み出している。皮肉なことに、20年に電気自動車の中国国内シェアが2位だったテスラは、22年には3位に落ちている。

 それでもまだテスラは人気だが、一方で「用なし」と見ている関係者も出始めているらしい。そして実際に、テスラへの締め出しなども起き始めているのだ。最近、中国各地で、テスラが厄介者、いや、邪魔者扱いされ始めているというのである。

 最初の兆候は21年のこと。まず人民解放軍が、テスラの自動車が軍事関連の情報を収集しているとして、利用禁止措置にした。

 さらに同年、上海国際モーターショーで、テスラの展示の上に乗って大騒ぎをしてテスラに対して不満を述べる女性が登場。その様子は見事に動画に撮られ、SNSで拡散された。当時、英ロイター通信も21年4月24日付の記事で「外国の大手ブランドにとって中国がいかに危険な場所になり得るかを示している」と報じている。

 最近では、湖南省にある空港の駐車場に「テスラ立入禁止」という看板が堂々と設置されていたり、湖西省のテレビ局やその周辺でも「No Tesla Allowed」、つまり、テスラ車の駐車などが禁止になったりする事例が出ている。広東省では、高速道路の一部区間でテスラ車の利用ができなくなったとする報道もある。

●中国のテスラ排除 ハイテクさが要因か

 こうした措置の理由は、テスラの特徴ともいえるそのハイテクさに原因がある。テスラ車には安全走行や自動運転を実現するため、車体の外にいくつものカメラを搭載している。そのカメラのおかげで、周囲の状況などを瞬時に把握できるわけだが、そのカメラが周囲のさまざまなものを撮影してしまうために、それが「スパイ行為」にあたると批判され始めているのだ。

 ちなみに中国では、軍事施設は公開されておらず、どこに存在しているのかも分からない。普通の建物だと見えていても、軍事や公安などのセンシティブな施設である可能性があるし、当局が「あれは軍事施設だ」と言ってしまえば、それが事実となる。

 具体例を挙げると、テスラ車には、スマホと車を接続することで、運転しながらハンズフリー通話できる機能を備える。このため、車体にはマイクを搭載しているが、そのマイクすら、窓を開けたり、感度を上げるなどの工作をすれば、「盗聴」に近いこともできなくはない。それも批判されているという。

●中国のスパイ法改正 収集データの扱い方も対象に

 そしてここに、改正されたばかりの反スパイ法も関わってくる。改正法では、スパイ行為の定義が広がり、データの扱いなどもその対象になったのだが、テスラは走るたびにカメラからのデータや地図データなど大量のデータを集めるため、この観点から、テスラを禁止にする場所はこれからさらに増える可能性が高い。そうなるとリスクある自動車という扱いになっていく。

 実は、この動きは中国自動車メーカーを中心としたテスラ追い出し行為だと見る向きもある。そして、こうした中国のさまざまなリスクは、今後も中国での自動車販売を加速させたい日本メーカーにも頭痛の種になる可能性がある。ただ日本企業にとって、問題はそれだけではない。

 日本のトヨタや日産、ホンダは実のところ、BEV(バッテリー式電気自動車)で、車載バッテリーを中国企業に依存している。というのも、BEVの車載バッテリーの世界シェアは中国企業が50%以上を占めているという実態があるからだ。

 コロナ禍でマスクの“中国依存”が浮き彫りになり、サプライチェーンの見直しや「経済安全保障」というものが注目を集めているが、同様に今後、カントリーリスクがさらに高まれば、バッテリーの調達が難しくなるだけでなく、先に述べた反スパイ法の関係で、バッテリーを中国国外に持ち出す際にバッテリー関連データの扱いが問題になる可能性がある。

 これについては、テスラも同じである。日本経済新聞の8月10日付の記事によると、テスラの自動車では車載バッテリーの4割近くが中国企業サプライヤーの部品でできているという。これはテスラにとっても今後のさらなるリスク要因だといえよう。

●外資企業から技術移転 政府の保護で急成長

 テスラと中国の事例を中心にここまで述べてきたが、両者の一連の動きと、そこから見えてくる中国の手法をまとめておきたい。まず、有名外資企業を何らかの特別待遇で中国国内に誘致する。生産部品の一部を中国資本の現地企業に外注させるとともに、外資企業に「技術協力」と称して、中国系企業に技術移転させる。関わった企業は外資企業から教わった技術をベースに、割安で模倣品を作り上げ、競合になる。ノウハウを搾り取った後は、国内法改正などで、もっともな理由を作り、撤退を促すというものだ。

 仮にその国内企業が成長した場合は、補助金を提供する。中国には13億もの巨大市場があるため、内需で莫大な収益を得ることが可能だ。政府のバックアップの下、国内の内需で巨大企業に成長し、国外企業を買収するなどしてさらに企業規模を拡大する。細かい点で異なる場合もあるが、大まかにいって、これが中国がよく使う手段だ。

 近年は米国の「GAFAM」に対抗する形で、中国にも「BATH」(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)というIT企業群も誕生している。米IBMを買収して世界的なPCメーカーに成長したレノボも、始まりは政府系の研究機関で、海外ブランドのPCを中国国内で販売する中で事業規模を拡大させてきた。同社は、富士通とNECのPC部門を買収し、傘下としている。

 こうした動きに対し、経済学者の一部からは「外資企業は中国企業を買収できないにも関わらず、中国企業は政府の保護下に置かれ、資本主義経済のルールにフリーライド(タダ乗り)する形で国外で企業買収を繰り返している」と批判の意見も出ている。対等な関係を指す「相互主義」に反するという指摘だ。

 実際、外資を事実上排除する環境下で、ウェイボはTwitter(現X)とFacebook、バイドゥはGoogleとヤフー、アリババはAmazonの、それぞれ代替サービスとして急成長。中国で人気の動画配信サービス「ビリビリ動画」も、日本のドワンゴが運営する「ニコニコ動画」を模倣したものだ。

 今回の処理水放出の問題で中国から反発が出ていることで、中国で頻繁に起きている「キャンセル・カルチャー」によるボイコットや輸出規制をするようになれば、ビジネスが打撃を受ける。対日本となると中国は歴史的な感情論も入り混じり、抗議が激しくなることも考えられる。12年には、民主党政権下で行われた尖閣諸島の国有化に抗議する形で始まった反日デモで、トヨタやパナソニックの中国工場が放火や破壊の被害を受けた。

●スズキと富士フイルムは中国から撤退

 日本企業の中には、すでに中国から撤退した企業もある。自動車メーカーのスズキは22年までに中国から撤退。同年には、富士フイルムも複合機器の工場を封鎖し、中国から撤退した。邦人が中国リスクにより、かなり神経質になりながら生活を強いられている現状と、それが改善する見込みが見えてこない中、中国からこれからも撤退する企業は出てくるだろう。

 中国に限らず、一度、企業が海外に進出すれば、撤退は簡単ではない。方法を誤れば、雇用を盾に現地従業員との労働争議に発展する可能性があるためだ。ソニーのように、中国からの撤退を発表した際、従業員が大規模ストライキに踏み切り、多額の補償金を支払ったケースもある。

 経済発展で中国国内の賃金も上昇。安い労働力という観点でASEAN地域などの周辺諸国と比較すると、以前よりその優位性は失われつつある。自社が中国に進出していなくても、取引先や提携先の企業が生産拠点の大部分を中国に依存しているケースも考えられる。株主や投資家にとっても、チャイナリスクを見越し、投資先を選定する必要もあるだろう。

 米中対立が激化する中、企業は中国との関わり方と「チャイナリスク」というものを再考する時期に来ているのではないか。
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